企業が持続的に成長するためには、公平で納得感のある人事評価制度が欠かせません。しかし実際には、制度が複雑すぎて形骸化したり、社員に十分理解されず不満が噴出したりするケースもあります。この記事では、人事制度を設計する際に押さえておくべきポイントや注意点について詳しく解説します。
そもそも人事評価制度の設計とは
人事評価制度の設計は、単に従業員を評価する仕組みを整えることではありません。人事制度全体の中核をなす要素であり、企業が描くビジョンを現実に近づけるための重要な基盤でもあります。よって、制度を導入する際に目的があいまいであったり、進め方を誤ったりすると、形だけの仕組みになってしまい、かえって運用に支障をきたす可能性もあります。近年は働き方改革やジョブ型雇用の浸透で、さらに重要さを増しているのが人事制度の制度設計です。
人事制度とは
人事制度とは、経営資源のひとつである人に関するルールや仕組みの総称です。制度づくりの出発点は、何のために人事制度をつくるのかという目的の明確化にあります。経営戦略と連動させて初めて、人材の活用が組織全体の成長へとつながるのです。人事制度設計のねらい
人事制度設計の大きなねらいはふたつあります。ひとつは企業のビジョンや経営目標の実現を後押しすることで、もうひとつは社員のモチベーションやエンゲージメントを高めることです。明確に設計された制度は、組織として進むべき方向を示し、従業員の努力を正しく評価できるので処遇につなげられます。これにより、社員はみずからの成長が評価や昇給に結びつくと実感でき、やりがいや一体感が高まります。その結果、企業と従業員がさらに同じ方向に向かって進めるようになり、組織力の強化につながるのです。
人事制度の構成要素
人事制度を構成する要素は、等級制度、評価制度、そして報酬制度です。等級制度は、従業員を能力や役割に応じて段階的に分類する仕組みです。ジョブ型にもとづく職務等級制度、メンバーシップ型の能力等級制度、ミッションに応じた役割等級制度など、さまざまな形があります。設計の際に大切なのは、序列を競わせるのではなく、成長の段階として位置づけることです。複数のキャリアコースを用意し、どのような基準で昇格や降格となるのかを明確にすることで、公平性と納得感を高められます。
また、評価制度は企業の行動指標や成果にもとづき、従業員の働きぶりや貢献度を判断する仕組みです。評価は等級や報酬に直結するため、その基準があいまいでは制度全体の信頼性が揺らぎかねません。
成果や能力だけでなく、行動や姿勢といった情意面も含めて、どのように評価するのかを事前に定めることが求められます。報酬制度は、シンプルで理解しやすい仕組みであることが大切です。
どのような成果や行動によって、どのような報酬が得られるのかを明確に理解できれば、努力が正当に報われると感じられます。
人事評価制度の設定方法
適切な人事制度は、従業員のモチベーションを左右するだけでなく、経営ビジョンを実現するための大切な仕組みでもあります。ここでは、その設定方法を段階ごとに解説します。方向性を決定する
人事評価制度は人事戦略のベースであり、企業のビジョンや事業戦略と一致していなければ効果を発揮しません。方向性を誤ると、制度は形骸化し、従業員の納得感を得られないまま機能不全に陥ってしまうでしょう。現状把握
現在運用している制度にどのような課題があるのか、また従業員が日々の業務でどのように感じているのかを明らかにすることが大切です。社内アンケートを実施したり、部署ごとにヒアリングしたりすることで、現場の声を吸い上げられます。その際、企業理念がどの程度浸透しているかもあわせて確認するとよいでしょう。理念が浸透していなければ、どれほど精緻な制度を設計しても現場で納得感は得られません。
設計
現状と課題が整理できたら、いよいよ設計を開始しましょう。ここで意識すべきは、等級制度、評価制度、報酬制度をどのように設計するかという点です。等級制度では、従業員をどのような基準で振り分けるのかを明確にします。評価制度については、成果や能力に加えて、企業が求める行動や姿勢をどう評価に反映させるかを検討します。そして報酬制度で決めることは、等級や評価結果をどのように処遇へ結びつけるのかです。
報酬は、給与や賞与といった金銭的なものだけでなく、研修機会や役割の付与といった非金銭的な要素も含まれるため、従業員が納得できるバランスを見極めることが必要です。
手順の整備
アウトラインが固まった段階で、マニュアルや手順書を整備します。評価の手続きや報酬への反映方法を明文化し、誰が読んでも理解できる内容にまとめましょう。また、法的な妥当性も慎重に確認しておく必要があります。制度そのものの完成度と同じくらい、法的リスクを避けるためのチェックが大切です。周知
どれほど緻密に設計された制度であっても、社員に理解されなければ運用できません。面談や研修会を活用し、制度の意義や評価基準、報酬への反映方法をていねいに説明することが求められます。人事評価制度を設定するうえでの注意点
人事評価制度は、ただ導入するだけでは期待どおりの効果は得られません。評価の基準や運用方法に不備があれば、従業員の不満や組織の停滞を招く恐れがあります。ここでは、人事評価制度を設計・導入する際に押さえておきたい注意点を解説します。企業ビジョンと同一であること
まず大前提となるのは、企業のビジョンや経営戦略と制度を結びつけることです。人事評価制度の最終目的は、企業が掲げる方向性を実現するために人材をどう育成・活用するかを示すことにあります。ビジョンと制度が一致していなければ、社員は何を評価されるのか分からなくなり、制度そのものへの信頼を失ってしまうでしょう。
社員が納得していること
評価制度は人事部や経営層が一方的に決めるのではなく、社員に理解され、共感を得てこそ機能するものです。評価基準が不明確であったり、運用が不透明であったりすれば、従業員のモチベーションは下がり、制度への不満が広がっていきます。その結果、離職や人材流出を引き起こす可能性もあります。成長段階で制度改定する
企業の成長段階に合わせて、人事制度を改定することも重要です。創業期には組織の柔軟性が求められるので、制度は最小限で十分かもしれません。しかし、組織が拡大し成長期を迎えると、公平性の担保が必要になります。成熟期に入れば、多様なキャリアパスや役割に対応するための評価基準が求められるでしょう。
人材育成と連動させる
人事評価は、社員の成長を後押しする仕組みでなければなりません。たとえば、評価結果をフィードバック面談で具体的に伝えることで、社員が自分の強みや課題を把握できます。また、評価項目を社員の能力開発と関連づけることで、制度が育成プログラムの一環として機能します。わかりやすいこと
人事制度は、できるだけ分かりやすく設計することが大事です。複雑すぎる評価制度は、結局のところ運用が徹底されず、形だけの仕組みになりがちです。評価方法や報酬への反映ルールは誰が見ても理解できるものでなければなりません。わかりやすい制度は納得感を高めるだけでなく、人事部門や管理職の負担も軽減してくれます。